2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

地のめぶける 2

七つまで生きられないと角占に言われた”濁り”の末娘も無事に成人を迎えて、一番東の山を一つ任された。言葉の通じない獣のほうが多いといわれ皆のほしがらない極東の山脈だが、告げられた時の誇らしさを眞白はまだ覚えている。今年成人できたのは7人だ。一…

空のひらける 2

真っ赤に燃える火の水が、白い煙を吹きだす。うねりながら闇の中を沈んでいく。煙は粒となり、粒は濃淡を作りながら浮き上がっていき……火は固まって眠りについた。粒たちは雲になり、初めての雨が降った。そのころに、旦那様たちの形ができたのだと。そう知…

地のめぶける 1

ふぅ、とひとつ。息を吐く。すぅ、とふたつ。息を吸う。―――この喉を通る薄い空気すらない時代に、あの子は生まれたのか。灯火だけが揺れる洞の奥で寝ころびながら、眞白は出会いの前を思う。私を真逆の色で呼ぶ子、確かに私の一部を成す片割れ。ただ一人……た…

空のひらける 1 

一つ数えて、前を向く。二つ数えて、立ち上がる。―――落ちる、加速しながら。―――落ちる、ただひたすらに青の中を。風に…「私たち」に逆らう自分の体躯を感じる。確かに今、「私」がある。自分があることは、別れではないことを教えてくれたあなた。ひとりとひ…